神さまからあなたに与えられた才能

こんにちは、なかむら詩子です。このたび、私のnoteで連載していた『風姿歌伝~声を出すことがもっと楽しくなる!ボイストレーニングのヒント』をこちらのブログへお引越しすることにしました。

この『風姿歌伝』には、発声研究者フレデリック・フースラーの著書『うたうこと』に書かれた大切なことを伝えたい!という想いが詰まっています。『うたうこと』は、ボイストレーニングの聖典と呼ばれるほどの良書ですが、翻訳が難解ということから嫌煙されているようです。

しかし、フースラーメソードを勉強していて、且つ文章が好きな人にとっては、言うほど難しくなく読めてしまうんです。むしろその言葉に秘められた奥深さに、感心して溜め息をついてしまいます。もしかしたら、そういうふうに読んでいる人が少ないのかもしれないと思いました。それって、すごくもったいないと私は思うのです。

そこで、『うたうこと』の価値を今一度掘り起こしたく、自らもフースラーメソードを勉強する筆者が、声を出すことがもっと楽しくなる!ボイストレーニングのヒントとして、実体験に沿いながら楽しくお届けします。どうぞよろしくお願い致します。

目次

■ 天から与えられた「声」

私が好きなフースラーの言葉に次のようなものがあります。

「天与の恵み物を、常に自分の制御のもとに置いておかねばならない」(※1)

こんな意味です。

いろいろな理由から声が出なくなってしまったときも、どうやったら直るのか?知っておかないといけないよ。
神さまからあなたに与えられた才能、大事に扱いなさいね。

すごく素敵な言葉ですよね。

私はどこからどう見ても凡人ですが、稀に「よい」声を最初から出せる天才と呼ばれるような人がいらっしゃいます。フースラーはそのような人たちにも、なお大事にしなさいと伝えます。どんなに才能がある人でも、正しいやり方でしっかりトレーニングしておかないと、「遅かれ早かれ必ずその声をそこなうか失って」(※2)しまいますよ。そう注意喚起します。

■ 人間のからだは、みんな同じ造り

そもそもフースラーは、私たちの発声器官はもともと「よい」声で歌い、健全な声で表現する機能が最初から備わっていると考えます。解剖と生理の視点では、

人間のからだは、みんな同じ造りをしている。

だから、天才も凡人も同じようにしっかり勉強して、トレーニングもしなさいね。特別に作られた人なんかいないんだから。ここまで読み込むと、最初にご紹介した「天与の恵み物を、常に自分の制御のもとに置いておかねばならない」という言葉の奥深さに気づきます。

人間のからだは、みんな同じ造り。これって、あたり前のことなんだけれど、つい忘れてしまう視点です。

そういう意味で、ボイストレーニングの世界は、みんなに伸びしろがある世界なんです。自分にとっての"最優秀"を黙々と目指せる素晴らしい世界!

■ 肉体に目を向けて、そこから自由に学んでみよう

実は私、レッスンでは、3D動画やイラストを用いて、解剖と生理についてたびたびお話させていただいています。これは、人間のからだは、みんな同じ造り―この考えをベースに勉強していって欲しいからです。

解剖と生理についてのお話は、苦手な人にとっては混乱のもとになるため、あまりお話されない先生もいらっしゃるようです。
私の場合、自分自身が、3Dの人体解剖図のおかげでボイストレーニングの解像度が飛躍的に上がった人間なんです。ですから自分の経験則に従って、解剖と生理についてのお話をしています。

自分のからだのことを知るって、面白いんですよ。神秘的だし、精神論に偏らないためにも、肉体に目を向けるのはよいと思っています。
特にプロの歌手・役者には、解剖と生理のお話は、からだのマッピングに役立つと感謝されるほうが多かったです。

どんなときも、型稽古は役に立ちますが、型稽古が目的になっては、しなやかさが失われていきます。声においては、出なくなってしまいます。
ですから頭ではなく、まずは自由な気持ちで、心を解放するように学んでみて欲しいです。真面目な人ほど、正しい or 間違いに振り回されて、疲弊してしまいますからね。

肉体に興味がある人は、肉体に目を向けて、そこから自由に学んでみましょう。

トレーニングは、完璧を目指さなくても大丈夫!回数を重ねることで成長できます。いろんなことを試してみましょう。
もしも、いろいろな理由から声が出なくなってしまったら、どうやったら直るのか?おひとりで悩まず、ご相談してください。

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※1『フレデリック・フースラー/イヴォンヌ・ロッド=マーリング 著   須永義雄/大熊文子 訳『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ―』音楽之友社 15頁22行目
※2『フレデリック・フースラー/イヴォンヌ・ロッド=マーリング 著   須永義雄/大熊文子 訳『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ―』音楽之友社 15頁19行~20行目

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