「声」は土の中でメキメキ成長している
ボイストレーニングをしていると、最初はこんなことがよく浮かびます。
- 筋肉の作用をいまいち実感できない
- あれ?このアンザッツって、どういう音色だったっけ?(レッスンではできていたのに?)
- いつも通り歌ったほうが楽じゃね?
- 本当によくなってるの?
私が採用しているボイストレーニング、フースラーメソードは、最初は変化をしっかり実感できない方が多いです。逆上がりができるようになったり、自転車に乗れるようになったりするように、発声における筋肉が正しいフォームを『記憶』してくれるまで、ついさっき出せた音色が、翌日にはさっぱり忘れてしまったかのように、出せなくなってしまったりもします。私がそうでした(笑) 最初のうちは、あれ?アンザッツ4番どっか行っちゃった???とよくなっていました。
安心してください!大丈夫ですよ!
正しいやり方でトレーニングを続けていれば、目には見えなくても「声」は土の中でちゃんと根を伸ばし、発芽の機会を待っています。私の最初の10ヵ月は、こんな感じでした。
- 1ヵ月目 喉頭が動かない(そもそも喉頭がわからない)
- 5ヵ月目 喉頭が上がる感覚がわかる、地声の出し方がわからない、咳が出てしまう
- 6ヵ月目 声が鳴るようになる※初めてハッキリ変化が出る
- 7ヵ月目 咳が収まる、アンザッツ4 の喉頭位置がわかってくる(日によってわからなくなる)
- 10ヵ月目 自発的に課題に気づき、次はこれを試したいとレッスンが楽しみになる、主体性(コミットメント)がはっきりと出てくる、歌声が明らかに変わってくる(特に声量が増える)
こう振り返ってみると、私の喉、頑固だったんだなあと気づきます。(うちに来る生徒さま、もっとスムーズに進まれていらっしゃるぞ?)
私が「できない私」をさらし、わざわざ自らが人柱となったのも、みなさんに「自分はダメなんだ」と思わないで欲しいという想いからです。もしかしたら、ダメなのではなく、種が土の中で成長している最中なのかもしれないのです。これを確認するのは、やはり正しいやり方で行動していくことなのですね。
ですから、ジャッジするよりも、自然法則を信頼して、ご自身のからだも信頼して欲しいのです。「こういうふうに表現したい!」という衝動も開放していきましょう。
フースラーさんも私たちにこう伝えてくれています。
「まったく自然な歌い方を獲得するまで、すなわちほんとうによい歌手になってしまうまで、あせってはならない。」※
トレーニングはすみやかに、また律動的に行うほうが筋肉にとってよいのですが、成長はのんびり構えるくらいがちょうどいいと私は思っています。それはノロノロするのではなく、自分を、自然の法則を信頼するという意味です。
目には見えないけれど、「声」は土の中でメキメキ成長しています。楽しみにお勉強を続けましょう。
※『フレデリック・フースラー/イヴォンヌ・ロッド=マーリング 著 須永義雄/大熊文子 訳『うたうこと 発声器官の肉体的特質―歌声のひみつを解くかぎ―』音楽之友社 62頁27行目~28行目
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